映画「第三の殺人」をいまさらながら見ました。
劇場公開時には「ちょっと重い映画かな?」という印象があって、見に行かなかったのですが。
たまたま見る機会があって、なんとなく見ていたら、この映画、私が思っていたような「重い」映画ではありませんでした。
何気なく見た映画ですが、考えされられる映画でした。
見てよかったです。
単純に、誰かを悪者にすることの怖さを感じました。
アマゾンプライムでも見れます。(2019年4月現在の情報です。最新の情報は公式ホームページでご確認ください)
「誰が誰を裁くんですか?」に考えさせられる
役所広司さん演じる三隅高司に、父親を殺された、広瀬すずさん演じる山中咲江。
この山中咲江が、福山雅治さん演じる弁護士・重盛朋章に言うセリフ。
「誰が誰を裁くんですか?」がこの映画のキーワードだと思います。
殺人犯で、言っていることがころころ変わる三隅高司。
裁判では勝つことが大切で、真実なんて関係ないと言い切る重盛朋章。
ころころ言い分が変わる三隅高司を持て余し、重盛朋章に弁護を丸投げする、吉田鋼太郎さん演じる弁護士・摂津大輔。
映画のはじめのころはこの3人、なんてやつなんだと思っていましたが、映画が進むにしたがって、この3人を好きになっていきました。
対して、映画が進むにしたがって、山中咲江の母親・斉藤由貴さん演じる山中美津江が一番嫌な奴に。
裁判官や、検事とのやり取りを思い出しても、この「誰が誰を裁くんですか?」のセリフが心に残ります。
本当に、悪いやつって誰なんだろう。
本当に裁かれるべき人は誰なんだろう、と思います。
なんと言っても役所広司さんの演技が凄い!
「第三の殺人」の映画で特に感動したのが、役所広司さんの演技力。
役所広司さん演じる三隅高司は、今回が再犯。
1度目の殺人の時に、彼を逮捕した警察官が言った「彼は空っぽの器」。
その言葉の通り、三隅高司は終始、うつろな表情です。
でもそのうつろな表情が、ころころ変わるのです。
欺くようなこずるい表情、訴えるような救いを求めるような表情、悲しい、つらい表情。。。。
何通りもの表情を見せてくれます。
こんな福山雅治さん、初めて見た!
いつものイケメンなかっこいい福山雅治さんとは、別人の福山さんを見ることができます。
リアルに弁護士に見えます。
そして、最初は裁判に勝つことだけが大切と考えている、冷たい事務的な男だと思っていたら、彼自身の苦悩も出てきて。
福山さんが、複雑な心情を、こんなふうに表情だけで演技できる人だとは思いませんでした。
福山さんの演技力、すごいと思いました。
カメラワークが凄い!
三隅高司は刑務所にいるため、弁護士の重盛朋章とは、常に面会室の透明な板越しに話します。
最初は、その透明な板をはさんで2人が話しています。
重盛朋章は裁判で勝つことだけが大切で、真実なんてどうでもいいと言い切る男。
三隅高司にも「真実なんてどうでもいいのかな?」と言われます。
その重盛朋章が、だんだん真実を知ろうと、あちこちを訪ね歩き、事務所に泊まり込みで調べものをするようになります。
面会室でも最初は事実確認が主な会話でしたが、だんだん三隅高司に真実を話すようにせまるようになります。
重盛朋章の気持ちが、三隅高司に寄り添うようになってくると、間にある透明な板に、重森や三隅の顔が映り、それがお互いの顔に重なり、まるでどちらかが、相手の代弁をしているように見えてきます。
この面会室の、2人の間にある透明な板の使い方が、うまいなあと思いました。
「万引き家族」の是枝裕和監督
この「第三の殺人」の是枝裕和監督は、カンヌ映画祭で最高賞を取った「万引き家族」も撮りました。
「万引き家族」はまだ見ていませんが、この監督の作品で「誰も知らない」は見たことがあります。
「第三の殺人」と「誰も知らない」は、どちらも社会の弱者に焦点を合わせた映画です。
そして、重いテーマを扱いながらも、重く暗い感じにはなっていない。
湿っぽくなくて、カラッとしています。
見ている最中や、見終わった後に、重苦しい気持ちにはなりません。
冷静に、客観的に考えさせられる感じです。
こういう考えさせられる映画を見ると、自分の日々の生活で多少のやりきれないことがあっても、静かに向き合わねばという気持ちになります。
この映画、人間の体温が感じられる映画だと思いました。
この映画、見てよかったです!
文庫本も出てます。