「長くつ下のピッピ」や「ちいさいロッタちゃん」の著者、アストリッド・リンドグレーンを描いた映画「リンドグレーン」を見てきました。
子供のころ、「長くつ下のピッピ」はお気に入りの本でした。
ピッピは9歳の子供ながら、自立して1人で生活している女の子。
自由人で自然児なピッピは、お行儀なんか関係なく、自分のしたいように行動して、生きたいように生きています。
子供ながらに、そんなピッピに憧れました。
そのピッピを生み出したのが、スウェーデンの作家アストリッド・リンドグレーン(Astrid Lindgren)
この映画を見るまで、アストリッド・リンドグレーンについては何も知らなくて、漠然と自然の中でのびのびと過ごして、平和でおだやかに過ごした人なんだろうなあと思っていました。
でも違いました。
映画「リンドグレーン」は、見た後に元気になれる映画です。
自分の気持ちに、もっと正直にならなくちゃと思いました。
少女のころのアストリッド・リンドグレーン
映画の冒頭では、アストリッド・リンドグレーンはピッピのような女の子でした。
三つ編みにしたおさげを揺らして、お行儀のいい子というよりも、楽しくて元気で、厳格な母親にいつも怒られるような、おてんばです。
ダンスパーティーで、誰にも誘われなかったら、同じように残った女の子と一緒に踊ります。
踊りたかったら、女の子と踊っちゃえという感じです。
そして、のってくれば、1人でも踊ります。
1人で踊ってりるさまは、本当にピッピそのもの。
アストリッド・リンドグレーンの正直さ
幼いころから
「いい子にしなさい」
「お行儀よくしなさい」
と刷り込まれてきたように思います。
自分の気持ちに正直になりたいと思いつつも、無意識のうちにどこかで
「いい子にしなくちゃ」
「お行儀よくしなくちゃ」
と大人になってからも、どこかにしみついているように思います。
「いい子にしなくちゃ」「お行儀よくしなくちゃ」が、いつの間にかいろんなことを判断したり決断するときに邪魔をしてきて、自分の正直な気持ちよりも、世間の目や評価のほうに重きを置いているようにも感じます。
でもアストリッド・リンドグレーンは違います。
雪道での帰り道に、叫びたくなったら叫ぶ。
好きになったら好き。
両親に反対されても、自分の気持ちに従う。
潔さと、自分を貫く誇りを感じます。
お行儀のよさとは程遠いのに、気高さを感じました。
自由と強さと責任と
自由に生きるって、とても魅力的。
自由に生きてみたい。
でもそこには、必ず責任が伴います。
自由の結果を、自分で引き受ける責任です。
規範どおりでなく、平凡の道をそれたところに自由はあります。
未知の道なので、失敗や挫折、ときには傷つきもします。
平凡な道を歩いているときには慰めてくれるまわりの人も、自由に生きている人に何かあると
「自業自得だ」
「そんな生き方をするからだ」
と非難したりします。
自由をあきらめて凡庸な道を進めばあまり出会わないような、危険や困難、つらいこと、悲しいこと、苦しいことにも出会います。
アストリッド・リンドグレーンは、その1つ1つに、誠実に取り組んでいるように思います。
例えば。
ここからは少しネタバレを含むので、ご注意ください。
愛した人が、ある事柄に対して、軽く考えていたことが発覚したとき。
映画の中で
「遊び人は安くついた」
とあの男が言ったとき、私は
「こいつ、最低やな」
と思いました(笑)
自分の娘ほどの若い女性と恋仲になったことを、勲章のように思っているというか。
遊び人をかっこいいと思っていて、遊び人の自分に酔っているというか。
そして、アストリッド・リンドグレーンもあっぱれなほど、この男をあっさり捨てます。
ここ、お見事!
普通はこうはいかないと思います。
若い女の子が、家族の反対も押し切って、ある事を起こしているので。
「え~、こんなヤツやったん?
でももう、後戻りはできひんから、我慢するしかないか」
と男の不誠実を感じながらも、我慢して、あきらめて、楽だと思われるほう(ここでは男と結婚して養ってもらうほう)を選びそうです。
でもアストリッド・リンドグレーンは違う。
「こいつ、あかんわ!」
と思えば、さっさと別れる。
お見事!
そして絶対、正しい!
でもそれはいばらの道なんですが。
そしてアストリッド・リンドグレーンも、しばらくはいばらの道、過酷な道を歩くのですが。
自分の気持ちに正直に、正しく生きていればいずれ夜は明ける
この後も、アストリッド・リンドグレーンはいくつか選択や決断をしますが、どれもお行儀のよさとは関係なく、自分の気持ちに正直に決断します。
自分の気持ちに正直に、といっても自分勝手なのではなく、まわりの人への思いやりもあるし、このアストリッド・リンドグレーンという人、結構まわりの人と仲良くなるというか。
常に誰かが助けてくれたり、情報をくれたり。
好かれる性格だったんだろうなあと思います。
そしてつらいめや、悲しいめに会っても、このアストリッド・リンドグレーンという人、しっかり地に足をつけて生きている感じ。
つらくても仕事に頑張る。
悲しくても、耐える。
そして明けない夜はない、というのは、こういうふうに生きている人は、誰かが手を差し伸べてくれるのだということかと思います。
どういうふうに生きてる人?
そこはうまく説明できないので、映画「リンドグレーン」を見てください。
映画「リンドグレーン」の公式ホームページはこちら。
この映画は、これからも見返す映画になりそうです。