久しぶりに、美しい映像に目を奪われ、心地よい余韻に浸れる映画を見ました。
1951年のベトナムはサイゴンを舞台にした「青いパパイヤの香り」
1993年にベトナムとフランスの共同で制作された映画です。
不思議な空気感に包まれた映画なのですが、とにかくどのシーンも絵葉書のような美しさ。
物語は、ほとんど家の中で進行するので、映るのは家の中と庭くらい。
セリフも少なめで、情緒があって、おだやかな空気に包まれた感じ。
絵画のようなシーンの連続で、目が離せない映画です。
私はU-NEXTで見ました。
(本ページの情報は2019年8月時点のものです。
最新の配信状況は U-NEXTサイトにてご確認ください)
「青いパパイヤの香り」のあらすじ
幼い少女ムイは、サイゴンの布を商う商人の家に住み込みの下働きとしてやってきます。
そこにはおばあさんの下働きもいて、先輩としてムイに仕事を教え、ときに年長者としてムイをあたたかく見守ってくれます。
ムイが働く商人の家は、夫婦と男の子3人、主人の両親の3世代が住んでいます。
夫婦にはムイと同じ年くらいで亡くした娘がいたので、奥さんはムイをかわいがります。
働き者のムイは仕事の合間に、木が生い茂る小さな庭にやってくるカエルや虫たちと戯れます。
またおばあさんに庭にあるパパイヤの木から青いパパイヤをもいで、それで料理を作ることも習います。
ムイはこの家で下働きをしながら成長していきますが、月日が経つにつれ奥さんたちの家族やムイにさまざまな変化が起こります。
「青いパパイヤの香り」のおすすめなところ
おだやかでやさしく、美しい映像
ほとんどのシーンがムイが働く家の中と、狭い庭。
でも本当にどのシーンも絵画のような美しさ。
草木が生い茂る庭にある炊事場で、しゃがんだムイとおばあさんが料理を作るような何気ないシーンでさえ、牧歌的な美しさ。
この映画を撮ったのは、12歳までベトナムに住んでいたベトナム系フランス人、トラン・アン・ユン監督。
ベトナムでの撮影が困難だったため、フランスで自分の記憶の中にある1950年代のベトナムを再現したのだそう。
私はてっきり実際にベトナムにある家で撮ったと思いましたが、全部フランスに再現して作ったセットなのだとか。
静かにのんびりとすすむストーリーが心地よい
セリフは少な目で、途中で夫婦の夫が家出したり、家族が亡くなったりといろんなことが起きますが、終始おだやかに、静かに物語が進みます。
セリフは少な目なんですが、繊細な人間関係が描かれていて、あきさせません。
夫の家出もたびたびのようなのですが、悲壮感やシリアスな空気はゼロ。
いろんなことが起きながらも、過ぎていく日々をたんたんと描く感じが、心地よいです。
純真無垢なムイが子供から少女、女性へと成長していく過程がいい
最初下働きでやってきたときのムイは幼い子供だったのですが、下働きをしながら少女へ、そして女性へと成長していきます。
大人になるにつれて、ムイも奥さんの苦悩をなんとなく理解するように。
言葉少なく、ムイと奥さん、ムイとおばあさんが心を通わせていく過程も見ていてじんとします。
かわいい子供から、美しい女性へと成長していくムイからも目が離せません。
私的には、ストーリーと結末もいい!
なんとなく気力と体力が充実していなくて、はらはらする映画やどろどろしたストーリーは見たくないときにおすすめ。
家族の死や、夫の家出、商売の浮き沈みなど、悲しい負の要素もあるのに、どれもおだやかに美しく描かれているので、見ていてはげしく感情を揺さぶられるということはありません。
最初から最後まで、ゆったりとくつろいで、しかも飽きずに見られる映画です。
結末についてはネタバレになるといけないので、あまり詳しくは書けませんが、結末もここちよい、幸せな気分になる結末です。
「青いパパイヤの香り」は、また見返したくなる映画になる予感。